むぅのほのぼのびより

短編小説、ゲーム攻略

star 人気RSS

google.com, pub-2656301591995340, DIRECT, f08c47fec0942fa0

【ひとかけらのこい】短編小説

time 2025/05/15

【ひとかけらのこい】短編小説

桜の舞う春の午後、透(とおる)は小さな雑貨屋の前で足を止めた。

ショーウィンドウに並んでいたのは、カラフルなキャンディーたち。淡いピンク、鮮やかなブルー、透き通るオレンジ——まるで小さな宝石のようだった。

「懐かしいな……」

子どもの頃、好きだったキャンディー。甘い味が舌に広がるたびに、幸せな気分になれた。そんな思い出を胸に、透は店のドアを開いた。

「いらっしゃいませ!」

柔らかな声に顔を上げると、そこには優しい笑顔の店員、千佳(ちか)がいた。

「キャンディー、お好きなんですか?」

「ええ、小さい頃から。ここにこんな素敵なお店があるなんて知らなかったな」

千佳は嬉しそうに微笑んだ。

「キャンディーって不思議ですよね。小さなひとかけらで、人の心を甘く、優しくしてくれるんです」

その言葉に、透はふと千佳の指先を見た。彼女の手は、毎日キャンディーを包んできたのだろう、優しく、温かかった。

透は迷いながらも、一粒のキャンディーを手に取った。

「この味、懐かしいな……昔、好きだったんです」

「よかったら、試食してみますか?」

千佳が差し出したキャンディーを口に入れると、甘さと共に、幼い頃の記憶がふわりと蘇った。

そして、その瞬間、透は気づいた。

この甘さは、キャンディーだけじゃない。

千佳の柔らかな微笑み、彼女の優しさ、そのすべてが心を甘く満たしていたのだった。

透はそっと、もう一粒のキャンディーを手に取りながら、言葉を口にした。

「また来てもいいですか?」

千佳は嬉しそうにうなずいた。

「もちろん。キャンディーが好きな人は、いつでも大歓迎です」

キャンディーのように、ゆっくりと溶けて広がる甘い気持ち。

透の心には、静かに始まった小さな恋が宿っていた——。

google.com, pub-2656301591995340, DIRECT, f08c47fec0942fa0

star 人気RSS





Recent Comments

    Twitter‐X

    Categories

    Archives