2025/02/16

**第六章:もう一人の影**
美咲の逮捕により、事件は解決したかのように思えた。
しかし、刑事・藤堂の胸には、どうしても拭えない違和感が残っていた。
「何かが引っかかる……」
佐々木隆一の過去を調べるうちに、藤堂はある事実に気づいた。
**佐々木は、過去に別の事件に関与していた可能性がある。**
それは、10年前に起きた未解決の殺人事件だった。
被害者は佐々木の元秘書――**倉本奈々(くらもと なな)**。
「佐々木は、奈々の死に関係していたのか……?」
藤堂はさらに調査を進めた。すると、驚くべきことが判明した。
**奈々の兄が、村上だったのだ。**
**第七章:復讐の動機**
藤堂は村上を再び尋問した。
「村上、お前は佐々木を憎んでいたな?」
村上は冷たい目をして答えた。
「当然だ。あいつは俺の妹を……」
「だが、証拠はない。」藤堂は静かに言った。「お前は、佐々木を殺す機会をずっと狙っていたんじゃないのか?」
村上はしばらく沈黙した。そして、低く呟いた。
「……俺がやる前に、あいつは死んだ。」
藤堂は村上の目を見た。そこには、復讐を果たせなかった男の悔しさが滲んでいた。
「つまり、お前は犯人じゃない……だが、まだ何か隠しているな?」
村上はゆっくりと口を開いた。
「佐々木は、奈々の死に関係していた。だが、証拠はすべて消された。俺はずっとそれを探していたんだ。」
「証拠……?」藤堂は眉をひそめた。
「奈々が死ぬ前に、あるデータを残していた。それが見つかれば、佐々木の罪が証明できたはずだった。」
藤堂は息をのんだ。
**「そのデータは、どこにある?」**
**第八章:消えたデータ**
村上の話によると、奈々は佐々木の会社の不正を暴こうとしていた。
しかし、その証拠となるデータは、彼女の死後、完全に消されてしまった。
「だが、奈々は最後にこう言ったんだ。」
**『証拠は、ガラスの中にある』**
藤堂はその言葉を聞いて、あることに気づいた。
「……ガラス?」
佐々木の家で消えたガラス製のオブジェ。
それが凶器として使われたのなら、もしかすると……。
藤堂はすぐに鑑識に連絡した。
「佐々木の家のゴミをすべて調べろ!ガラスの破片の中に、何かがあるかもしれない!」
**第九章:真実の破片**
数時間後、鑑識の田村が報告を持ってきた。
「藤堂さん……ガラスの破片の中に、極小のUSBメモリが埋め込まれていました。」
藤堂は息をのんだ。
「奈々の証拠データか……?」
USBメモリを解析すると、そこには佐々木の会社の不正を暴く決定的な証拠が残されていた。
「奈々は、これを守るために命を落としたのか……」
藤堂は静かに呟いた。
**――佐々木は、ただの被害者ではなかった。彼自身が、過去に罪を犯していたのだ。**
**第十章:最後の決着**
藤堂は村上にデータを見せた。
「これが、お前の妹が残した証拠だ。」
村上は震える手でUSBメモリを握りしめた。
「……奈々……やっと、お前の無念を晴らせる……」
佐々木の会社はこの証拠によって摘発され、過去の事件も再調査されることになった。
そして、美咲の裁判が始まった。
「美咲は確かに佐々木を殺した。しかし、彼女はただの加害者ではなく、佐々木の罪の犠牲者でもあった。」
裁判の結果、美咲には情状酌量が認められ、刑は軽減された。
事件は終わった。
しかし、藤堂は思った。
**「この闇は、まだ完全には晴れていないのかもしれない。」**
夜の街を歩きながら、藤堂は静かに煙草を吸った。
**――闇に沈む証拠は、時が経っても消えない。**