2025/02/16

ライブハウスの熱気が肌にまとわりつく。ステージの上では、ギターの音が空気を切り裂き、ドラムの振動が心臓に響く。
「やっぱり、生の音は最高だな」
私は一人でドリンクを片手に、フロアの隅で演奏を楽しんでいた。
その時だった。
「ごめん、ぶつかった!」
勢いよく誰かが肩にぶつかり、私は思わず飲みかけのドリンクをこぼしそうになった。
「大丈夫?」
顔を上げると、そこには驚いた表情の彼がいた。
「……え?」
私は息を呑んだ。
「……久しぶり」
彼――悠真は、昔の恋人だった。
「こんなところで会うなんて」
彼も驚いたように笑う。
「まさか君もこのバンド好きだったの?」
「うん、ずっと聴いてたよ」
音楽が再び鳴り響く。私たちは言葉を失い、ただステージを見つめた。
「なんか、懐かしいね」
悠真がぽつりと呟く。
「うん……」
私たちは、音楽を通じて出会い、そして別れた。
でも、こうしてまた音の中で再会するなんて。
「……終わったら、少し話せる?」
彼の声は、ライブの音に紛れながらも、はっきりと私の心に届いた。
「……うん」
私は頷いた。
音楽が終わる頃、私たちの時間は再び動き出すのかもしれない。