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【雨の日の約束】短編小説

time 2025/03/08

『雨の日の約束』
雨がしとしとと降る午後、駅前のカフェで彼女は窓際の席に座っていた。名前は彩花。手に持ったコーヒーカップからは湯気が立ち上り、ガラスに映る雨粒をぼんやりと眺めていた。
「あいつ、遅いな…」
彩花は時計を見た。約束の時間から15分が過ぎている。相手は幼馴染の翔太だ。大学の進路で離れ離れになって以来、2年ぶりに会うことになっていた。
彼女のスマホが震えた。メッセージだ。
「ごめん、電車が遅れててあと5分くらい。待ってて!」
彩花は小さく笑った。昔から翔太は時間にルーズだった。でも、その不器用さが嫌いじゃなかった。
やがて、傘を畳みながら息を切らして翔太が現れた。髪が少し濡れていて、頬が赤い。
「遅れてごめん!雨のせいでさ…」
「いいよ、いつものことだし」彩花は笑って席を勧めた。
二人は近況を語り合い、昔話に花を咲かせた。翔太は都会で忙しく働いていて、彩花は地元で小さな花屋を始めたばかりだ。話題が途切れると、翔太がふと真剣な顔をした。
「なあ、彩花。ずっと言えなかったけどさ…俺、お前が好きだった。中学の頃からずっと」
彩花の手が止まった。カップを持つ指が小さく震えた。
「…何?今さら?」
「今さらだけど、今言わないと後悔する気がして」
雨音が二人を包む中、彩花は目を伏せた。そして、ゆっくり顔を上げて微笑んだ。
「私も、ずっと待ってたよ。その言葉」
窓の外で雨がやみ、薄日が差し込んだ。二人の間に、新しい時間が流れ始めた。

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