2025/02/16

**第一章:万博の街へ**
2025年、大阪。世界中から人々が集まる**大阪・関西万博**が開幕した。未来の技術、文化、そして夢が詰まったこの場所は、まるで別世界のようだった。
**桐谷遥**は、大学の研究チームの一員として万博に参加していた。彼女の専門は環境デザインで、持続可能な都市計画についての展示を担当していた。
「遥、そろそろブースの準備しないと!」
同僚の**佐々木葵**が声をかける。
「うん、わかってる。でも、ちょっとだけ会場を見て回りたいな。」
遥はそう言って、展示ブースを抜け出した。
万博会場には、世界各国のパビリオンが並び、最新技術が紹介されていた。AIロボット、空飛ぶ車、未来の食文化――どれも彼女の好奇心を刺激した。
そんな中、遥はあるパビリオンの前で足を止めた。
**「未来の音楽」**と書かれたブース。そこでは、AIと人間が共演するピアノ演奏が行われていた。
遥が興味深く見ていると、隣に立っていた青年が話しかけてきた。
「すごいよね、この技術。」
遥は驚いて振り向いた。
**藤井悠斗**。彼は音楽大学の学生で、万博の音楽イベントに参加していた。
「ええ、本当に未来を感じる。」遥は微笑んだ。
「でも、やっぱり人間の演奏には敵わないと思うな。」悠斗はピアノを見つめながら言った。
「どうして?」
「機械は完璧な音を出せるけど、感情を込めることはできないから。」
遥はその言葉に共感した。
「確かに。音楽って、技術だけじゃなくて、心が大事だよね。」
悠斗は遥を見つめ、微笑んだ。
「君、音楽好きなの?」
「うん。ピアノは昔習ってたけど、今は弾いてないの。」
「じゃあ、久しぶりに弾いてみる?」
悠斗はブースのスタッフに頼み、ピアノを弾かせてもらうことになった。
遥は少し緊張しながら鍵盤に指を置いた。そして、ゆっくりと**ショパンの「ノクターン」**を弾き始めた。
悠斗はその音色をじっと聞いていた。
「…すごく綺麗な音だね。」
遥は照れながら微笑んだ。
「ありがとう。でも、悠斗くんの演奏も聞いてみたいな。」
「じゃあ、俺も弾くよ。」
悠斗はピアノに座り、**リストの「愛の夢」**を奏でた。
その旋律は、まるで遥の心に直接語りかけるようだった。
**第二章:万博の夜**
それからというもの、遥と悠斗は万博の会場で何度も会うようになった。
「今日はどのパビリオンを見に行く?」
「宇宙技術の展示が面白そうだよ。」
二人は未来の技術を楽しみながら、少しずつ距離を縮めていった。
ある夜、万博の中央広場で花火が打ち上げられた。
「すごい…!」遥は目を輝かせた。
「綺麗だね。」悠斗は遥の横顔を見つめた。
「ねえ、悠斗くん。」遥はふいに言った。「万博が終わったら、どうするの?」
「俺は音楽を続けるよ。もっとたくさんの人に演奏を届けたい。」
「素敵だね。」
「遥は?」
「私は環境デザインの仕事を続ける。未来の街を作りたいんだ。」
悠斗は微笑んだ。
「君の夢、素敵だね。」
その瞬間、遥は胸が高鳴るのを感じた。
「悠斗くん…私、あなたともっと一緒にいたい。」
悠斗は驚いた後、静かに遥の手を握った。
「俺も、遥と一緒にいたい。」
花火が夜空に輝く中、二人の心はひとつになった。
**第三章:未来への約束**
万博の最終日。
「これで終わりか…。」遥は寂しそうに呟いた。
「でも、終わりじゃないよ。」悠斗は微笑んだ。「これからが始まりだ。」
「そうだね。」
二人は最後にもう一度ピアノを弾いた。
**ショパンの「別れの曲」。**
しかし、それは別れではなく、新しい未来への序章だった。
「また会おうね。」
「うん、絶対に。」
万博の街に響くピアノの音は、二人の約束の証だった。