2025/02/16

**第八章:新たな疑惑**
事件は解決したかに思えた。しかし、美咲はどうしても違和感を拭えなかった。
「何かがおかしい…。」
彼女は黒崎の書斎に残された書類を調べていた。すると、一枚の古い契約書が目に留まった。
**『黒崎貴一と村上誠一郎(村上の父)による共同事業契約』**
契約書の日付は30年前。そこには、黒崎と村上の父が共同で会社を設立したことが記されていた。しかし、契約の最後には奇妙な一文があった。
**『この契約は、いかなる場合でも第三者に開示してはならない。違反した場合、契約は無効となる。』**
「どういうこと…?」美咲は眉をひそめた。
その時、背後から声がした。
「何を見ているんだ?」
振り向くと、そこには **藤堂慎一** が立っていた。
**第九章:弁護士の影**
「藤堂さん…。」美咲は警戒しながら契約書を隠した。
「君、まだ事件を追っているのか?」藤堂は微笑んだが、その目は冷たかった。
「ええ。でも、何か気になることがあって。」
「気になること?」藤堂はゆっくりと歩み寄った。「事件はもう解決したはずだ。村上が犯人だった。それ以上何を探るつもりだ?」
美咲は藤堂の態度に違和感を覚えた。まるで、彼が何かを隠しているようだった。
「藤堂さん、黒崎さんの財産について詳しく知っていますよね?」
「もちろん。私は彼の弁護士だからな。」
「では、この契約書のことは?」美咲は契約書を差し出した。
藤堂の表情が一瞬、硬くなった。
「これは…。」
「黒崎さんと村上さんの父が共同で会社を設立した契約書です。でも、最後の一文が気になります。『第三者に開示してはならない』って、どういう意味ですか?」
藤堂はしばらく沈黙した後、低い声で言った。
「これは…黒崎がずっと隠していた秘密だ。」
**第十章:封じられた真実**
藤堂は深いため息をつき、椅子に腰を下ろした。
「黒崎は、村上の父を裏切ったのではない。むしろ、村上の父が黒崎を裏切ったんだ。」
「えっ…?」美咲は驚いた。
「30年前、黒崎と村上の父は共同で会社を設立した。しかし、村上の父は会社の資金を横領し、黒崎を裏切った。その結果、黒崎は会社を守るために村上の父を追放したんだ。」
「そんな…。」
「黒崎はずっとこの事実を隠していた。村上の父を悪者にしたくなかったのかもしれない。だから、彼は村上に財産を譲ることで償おうとしたんだ。」
美咲は息を呑んだ。
「つまり、村上さんは誤解していた…?」
「そうだ。彼は復讐のために黒崎を殺したが、実際には黒崎は彼の父を守ろうとしていたんだ。」
美咲は震えながら契約書を見つめた。
「なんて皮肉なの…。」
**第十一章:もう一人の犯人**
しかし、美咲はまだ疑問を抱いていた。
「でも、藤堂さん。どうしてあなたはこの事実を隠していたんですか?」
藤堂は微笑んだ。
「君は鋭いな。」
その瞬間、美咲は気づいた。
「まさか…藤堂さんが黒崎さんを殺した?」
藤堂はゆっくりと立ち上がった。
「村上が黒崎を殺したのは事実だ。しかし、私はそれを利用した。」
「利用…?」
「黒崎は私の不正を知っていた。もし彼が秘密を話せば、私はすべてを失うことになる。だから、私は村上を操り、黒崎を殺させたんだ。」
美咲は背筋が凍るのを感じた。
「あなたは…黒崎さんを殺すように仕向けたの?」
「そうだ。村上は復讐心に燃えていた。私は彼に黒崎の秘密をほのめかし、彼を誘導した。」
「なんてことを…。」
藤堂は冷たい笑みを浮かべた。
「だが、君は知りすぎたな。」
その瞬間、藤堂は美咲に向かって歩み寄った。
「さて、どうする?」
美咲は息を呑んだ。
**第十二章:最後の対決**
しかし、その時――
「動くな、藤堂!」
長谷川刑事が銃を構えて現れた。
「藤堂慎一、君を黒崎貴一殺害の共犯として逮捕する!」
藤堂は驚き、後ずさった。
「くそっ…!」
美咲は安堵の息をついた。
「刑事さん…。」
「美咲さん、よくやった。」長谷川は微笑んだ。「君のおかげで、真犯人を捕まえることができた。」
藤堂は手錠をかけられ、警察に連行された。
事件はようやく終わった。
しかし、美咲はまだ心の中に霧が残っているような気がした。
「真実はいつも複雑ね…。」
霧の館に漂っていた謎は、ようやく晴れた。