2025/02/16
**第一章：奇妙な村**
山奥にひっそりと佇む「月影村」。この村には、ある奇妙な言い伝えがあった。
**「満月の夜、決して外に出てはいけない。」**
村人たちは満月の夜になると、家の扉を固く閉ざし、窓には分厚い布をかける。誰も外に出ようとはしない。
そんな村に、都会から一人の青年がやってきた。名は**悠馬（ゆうま）**。彼は古い民俗学を研究しており、この村の言い伝えに興味を持っていた。
「満月の夜に何が起こるんだ？」
悠馬は村の老人に尋ねた。しかし、老人は怯えたように首を振るだけだった。
「……知りたくないなら、今夜は絶対に外に出るな。」
しかし、悠馬はその忠告を無視することになる――。
**第二章：満月の囁き**
その夜、空には大きな満月が輝いていた。村は静まり返り、まるで時間が止まったかのようだった。
悠馬は好奇心に駆られ、そっと外へ出た。冷たい夜風が頬を撫でる。
「何も起こらないじゃないか……」
そう思った瞬間だった。
**――カサ……カサ……**
どこからか、奇妙な音が聞こえてきた。悠馬は息をのんだ。
音のする方を見ると、そこには**人影**があった。
しかし、それは人ではなかった。
**異様に長い手足、歪んだ顔、そして月光に照らされて輝く真っ黒な瞳――。**
悠馬は恐怖で体が動かなくなった。
その影は、ゆっくりと彼の方へ近づいてくる。
**第三章：村の秘密**
悠馬は必死に逃げた。息を切らしながら村の中心へと駆け込む。
「助けてくれ！！」
しかし、村人たちは誰も家から出てこない。
その時、老人が扉の隙間から叫んだ。
「お前は見てしまったんだな……もう逃げられん……！」
悠馬は混乱した。「どういうことだ！？」
老人は震えながら言った。
「満月の夜に外に出た者は……**次の満月の夜に、あれになるんだ。**」
悠馬の背筋が凍った。
**――次の満月の夜、自分があの化け物になる？**
**第四章：逃亡**
悠馬は村を出ることを決意した。次の満月までに、何としてでもこの呪いを解かなければならない。
しかし、村を出ようとした瞬間、背後から囁き声が聞こえた。
**「……お前も、こっちへ来るんだ……」**
悠馬は振り向いた。そこには、先ほどの影が立っていた。
**――いや、違う。**
それは、かつて人間だった者の姿だった。
悠馬は絶叫しながら村を飛び出した。
**第五章：次の満月**
それから一ヶ月後。悠馬は都会に戻り、必死に呪いを解く方法を探した。しかし、どんな文献を調べても、村の言い伝えについての記録はなかった。
そして、次の満月の夜――。
悠馬は鏡を見た。
**瞳が、黒く染まっていた。**
彼は震えながら気づいた。
**「……俺は、もう人間じゃない。」**
その夜、悠馬は姿を消した。
そして、月影村では、新たな影が満月の光の下を歩いていた――。
**――満月の夜、決して外に出てはいけない。**
