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【海に響く恋】短編小説

time 2025/05/10

【海に響く恋】短編小説

潮風が頬を撫でる。青く広がる海の向こうに、夕陽がゆっくりと沈んでいく。

「綺麗だね」

隣に立つ彼の声が、波の音に溶けるように響いた。

「うん……」

私はそっと微笑みながら、彼の横顔を盗み見る。海を見つめる瞳は深く、どこか遠い記憶をたどっているようだった。

この海辺の町で出会ったのは、偶然だった。旅行で訪れた小さな港町。迷い込んだカフェで、彼は店の奥で静かに本を読んでいた。

「海が好きなの?」

初めて交わした言葉は、それだった。

「うん。海は、過去も未来も飲み込んでくれるから」

その言葉の意味を、私はすぐには理解できなかった。でも、彼と過ごす時間が増えるにつれ、少しずつ分かるようになった。

彼は、かつてこの町で大切な人を失ったのだ。

「海は、全部を包み込んでくれる。でも、時々はこうして話しかけてくれる気がするんだ」

彼は波打ち際に立ち、そっと手を伸ばした。

「ねえ、君はどう思う?」

私は彼の手を握りしめた。

「海は、あなたの想いをちゃんと覚えてるよ」

彼は驚いたように私を見つめ、それから静かに微笑んだ。

「そうだといいな」

波が足元を濡らし、潮の香りが二人を包み込む。

この海が、彼の過去を抱きしめるように。
そして、私たちの未来を優しく導いてくれるように。

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