【波間に揺れる恋】短編小説

**第一章：出航**
青く広がる海の上を、一隻の豪華客船が進んでいた。
「オーシャン・ルミナス号」――それは、世界中の旅人を乗せて航海する美しい船だった。

この船に乗り込んだのは、旅行会社に勤める**遥（はるか）**と、船の整備士である**航（わたる）**。

遥は仕事でこの船に乗ることになったが、航はこの船で長年働いているベテランだった。

「船旅ってロマンチックよね。」遥はデッキで潮風を感じながら呟いた。

「まぁ、そうかもな。」航は笑いながら答えた。「でも、船はロマンだけじゃ動かない。ちゃんと整備しないと、すぐにトラブルが起きるんだ。」

遥はそんな航の真剣な表情を見て、ふと心が揺れた。

**――この人、かっこいいかも。**

**第二章：嵐の夜**
航海は順調だった。しかし、ある夜、突然嵐が船を襲った。

「波が高くなってる！みんな、船内に避難しろ！」航の声が響く。

遥は船室に戻ろうとしたが、強い風に煽られ、デッキの手すりにしがみついた。

「遥！」航が駆け寄り、彼女の腕を掴んだ。

「大丈夫……？」遥は震えながら航を見つめた。

「バカ！こんな時に外にいるなんて危険すぎる！」航は怒りながらも、彼女をしっかりと抱きしめた。

その瞬間、遥の心臓が大きく跳ねた。

**――この腕の中なら、安心できる。**

**第三章：静かな海**
嵐が過ぎ去った翌朝、海は嘘のように穏やかだった。

遥はデッキで朝日を眺めながら、航のことを考えていた。

「昨日はありがとう。」遥は航に声をかけた。

「無事でよかったよ。」航は照れくさそうに笑った。

遥は少し迷った後、思い切って言った。
「ねぇ、航って……恋愛とか興味あるの？」

航は驚いた顔をした。「え？なんでそんなこと聞くんだ？」

「なんとなく……」遥は視線をそらした。

航はしばらく黙っていた。そして、静かに言った。
「……俺は、船の上で恋をするのは難しいと思ってた。でも、昨日、お前を助けた時に思ったんだ。」

「何を？」遥は息をのんだ。

「……お前のこと、大事にしたいって。」

遥は驚いた。そして、ゆっくりと微笑んだ。

「じゃあ、船の上でも恋はできるね。」

航は遥の手をそっと握った。

**――波間に揺れる恋は、ゆっくりと進み始めた。**

**第四章：新たな航海**
それから数ヶ月後、遥は再び「オーシャン・ルミナス号」に乗った。

しかし、今回は仕事ではなく、航と一緒に旅をするためだった。

「次はどこへ行く？」遥は航に尋ねた。

「どこでもいいさ。お前と一緒なら、どんな海でも最高の旅になる。」

遥は笑いながら、航の腕にそっと寄り添った。

船はゆっくりと進み、二人の恋もまた、新たな航海へと向かっていた――。

**――海の上で始まった恋は、どこまでも続いていく。**