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【時計仕掛けのカフェ】短編小説

time 2025/05/10

【時計仕掛けのカフェ】短編小説

町の片隅に、ひっそりと佇むカフェがある。看板には「時の止まる場所」と書かれていた。

「いらっしゃいませ」

扉を開けると、店主の老人が微笑んだ。

「ここ、ちょっと変わったカフェなんですよ」

そう言われて店内を見渡すと、壁一面に時計が並んでいた。大きな振り子時計、アンティークの懐中時計、デジタル時計まで、ありとあらゆる時計がある。

「この時計、全部動いてないんですね」

私は不思議に思いながら尋ねた。

「ええ、このカフェでは時間が止まるんです」

老人はそう言って、コーヒーを淹れ始めた。

「時間が止まる?」

「そう。ここで過ごす間、外の世界の時間は進まないんですよ」

そんなバカな。私は笑いながら時計を見た。しかし、どの時計も針が動いていない。

「試してみますか?」

老人が差し出したのは、砂時計だった。

「この砂時計をひっくり返しても、砂は落ちませんよ」

私は半信半疑で砂時計をひっくり返した。

――本当に、砂は落ちない。

「……どういうこと?」

「ここでは、過去も未来も関係ないんです。今この瞬間だけが存在する」

私は驚きながら、コーヒーを一口飲んだ。

「じゃあ、ここにいればずっと歳を取らない?」

「そういうことになりますね。でも、外に出た瞬間、時間は元通りに流れます」

私は考えた。もしここにずっといれば、大切な人が歳を取っても、自分だけは変わらない。でも、それは幸せなのだろうか?

「……面白いけど、私は外の時間と一緒に生きたいな」

老人は微笑んだ。

「それが正しい選択ですよ。時間は止めるものではなく、進めるものですから」

私はカフェを出た。

外の世界は、いつも通り時間が流れていた。

でも、あのカフェのことを思い出すたび、私は少しだけ時間の不思議を感じるのだった。

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