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【風の音】短編小説

time 2025/02/16

【風の音】短編小説

青空が広がるある日の午後、病院の窓から差し込む光が、少女の頬を優しく撫でていた。彼女の名前は美咲。生まれた時から障害を抱え、入院生活を重ねながらも、彼女の心はいつも明るかった。周囲の人々や医師たちからの励ましの言葉が、彼女の心を少しでも楽にしてくれるからだ。

そんな美咲の日常は、ある少年との出会いによって大きく変わった。彼の名前は大輝。美咲が入院している病院の隣の中学校に通っている。彼はいつも元気で、明るい笑顔を絶やさない男の子だった。ある日、美咲が病院の庭でひとり、花を眺めていた時に彼と出会った。

「何を見てるの?」大輝は笑顔で声をかけた。

美咲は驚いて顔を上げた。「えっと…花を見てたの。」

「きれいだね。それに、君もきれいだよ」と大輝は言った。美咲は照れくさくなり、思わず目をそらした。

それからというもの、二人は病院の庭で会うたびに話すようになった。大輝は美咲にたくさんのことを教えてくれた。遊びや遊園地、友達との楽しい時間。美咲は彼の言葉に心を躍らせた。初めて経験する楽しさに、彼女の心はどんどん広がっていった。

「大輝、私も遊園地に行ってみたい」と美咲は言った。

「一緒に行こうよ。絶対楽しいよ!」大輝の目はキラキラと輝いていた。

しかし、美咲の心には一つの不安があった。彼女は自分が障害を持っていることで、大輝が彼女をどう思っているのか、心の奥で悩んでいた。彼女は大輝に相応しい存在ではないと感じ、次第に彼との距離を置くようになった。

ある日、美咲は病室の窓から外を眺めていた。青い空と風に揺れる木々。彼女はその景色を見ながら、心の中で大輝のことを思っていた。「大輝は私のことをどう思ってるんだろう?」

その時、突然病室のドアがノックされた。「美咲、入るよ!」大輝の元気な声が響いた。

「うん、どうぞ」と美咲は答えた。ドアが開くと、大輝が顔を出した。

「何してたの?」彼は笑顔で訊ねた。

「ただ、外を見てただけ」と美咲は少し恥ずかしそうに返した。

「そっか。今日は特別なことをしてあげる!」そう言うと、大輝は美咲の手を引いて、庭に向かった。

庭に出ると、大輝は「目を閉じて」と言った。美咲は不安と期待を抱きながら、目を閉じた。風が彼女の頬を撫で、心臓が高鳴る。どんなサプライズが待っているのか、彼女はドキドキしていた。

「開けていいよ」と大輝が言った。美咲は目を開けると、目の前には手作りの風船がたくさん浮かんでいた。

「わぁ、きれい!」美咲は驚きと喜びで目を輝かせた。

「これ、君のために作ったんだ」と大輝が言った。その瞬間、彼女の心は温かさで満たされた。彼が自分のためにこんなことをしてくれたことに、嬉しさが溢れた。

でも、その嬉しさの裏にはまた、彼と自分の間にある壁を感じずにはいられなかった。「大輝、私…私なんかと一緒にいてもいいの?」美咲は思わず口に出してしまった。

大輝は驚いた表情で美咲を見つめた。「美咲、何を言ってるの?君と一緒にいるのが楽しいんだよ。僕は君が好きだ。」

その言葉を聞いた瞬間、美咲の心は大きく震えた。彼女は大輝の目の中に真剣さを感じた。大輝は彼女をそのまま受け入れてくれている。自分が障害を持っていることを気にせず、ただ一緒にいることを楽しんでくれている。

美咲は目を潤ませ、思わず涙がこぼれた。「ありがとう、大輝。私も…私もあなたが好き。」

その瞬間、二人の心が一つになった。美咲はこれまでの不安がふっと消え、彼との時間がどれほど貴重であるかを実感した。彼女はこれからも彼と一緒に楽しい日々を過ごしていくことを決意した。

風が優しく吹き抜け、二人の間に温かい空気が流れていた。美咲は心の中で誓った。どんな障害があろうとも、大輝と共に生きていく。この出会いが、彼女の人生に与えた光となることを信じて。

彼女の心には、これまで感じたことのない幸福感が広がり、未来への希望が芽生えていた。どんな時も、二人で笑い合う日々が続くことを願いながら。

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